伝  統  料  理  に  つ  い  て 

           
関東地方の影響を色濃く受けている食文化・・・・・
              
福島県いわき地方に伝わる伝統料理の書!!

                    伝統郷土食調査委員長 佐 藤 孝 徳 


 伝統料理は先人が経験し試行錯誤を繰り返しながら後世に伝えられた

一つの文化である。

 特に、その地方の産業や特産品などをみごとに食素材に用い、独自の

料理として考案されたものである。

 古くから伝えられる食文化は、四季の行事に料理される「行事食」と

「日常食」に大別されよう。

 行事食は、神や祖霊に捧げる食物と同じ火で煮炊きしたものを共食

することによって、神と人との間に目に見えないつながりが生じ、また

他人同士が一つ釜の飯を食べることでお互いに身が離れがたい縁で

結ばれるものと信じてきた。

 つまり、祭りの原点でもある食文化は、神々に捧げた飲食物を自分

たちも食べることで神と一体になるということにあったのである。

 また、人の一生の儀礼における食事も節目節目にさまざまな儀礼が

行われ、一般的には冠婚葬祭と慶弔の儀礼であろう。

 江戸時代の中期以後には、江戸の文化がこの地方にも流れ込み

料理本が流行した。

 珍しい江戸料理を次第に自分達の物にしてこの地方独自の料理を

確立した。

 会席料理などの流行である。武士・町人・豪農・船主など富裕者の

間だけの物であったが時代と共に一般化し、現在に至っている。

 それは、この地方独自の祝い歌(めでた)を歌え、お酒を回し飲み

する祝い事の形式は会席膳料理として完成させた。

 大皿に鯛やかながしらの焼き魚を盛り、更にまなす・魚の刺身を

ふんだんに盛って飾った。

 他には五目御飯、鯛の吸物、平椀のかまぼこ、カンピョウ、椎茸、

焼き魚、花人参の煮物などを盛った物、酢物は鮟鱇の共酢、なます

大根などである。これらの膳の他に豊富な魚の焼物別皿にするなど

山海の品々が並んだ。

 こうした江戸料理の流行は、漁業と新しい農作物を発展させた。

 特に漁業の発展は、千葉県・茨城県との盛んな交流によってもた

らされた。同時に食文化をも大きく変化させた。現在でも関東地方と

同様の伝統料理として板サンガ、なめろ、鰹の煮えなます、マンボ

ウの料理な現存している。

 明治時代に入り交通の発達は魚の流通革命をもたらした。特に

常磐線の開通は漁業を大きく発展させ、東京の大マーケットは、

鰹・鮪・沖ギスなど大量に消費した。

 また、魚の加工技術も発展して、蒲鉾・干物など食材として大量に

消費されるようになった。

 魚の調理の方法は(1)生魚を刺身で食べる (2)生魚・干魚を

焼く (3)生魚を煮る、なのである。調味料は味噌・醤油・酢など

基本として古くから使用されていた。

 一方日常食の基本は、米食であるが、昭和30年頃までは麦

飯が普通であった。

 どこの家庭でも、米は収穫の出来る秋まで食いのばさなけれ

ばならないので「かて」を混ぜた。

 大根・大豆・じゃがいも・里いも・かぼちゃ・さつまいも等、

それぞれの季節の収穫物があてられた。

「ひば」といって、大根の葉を干した物を「かて」にした家も

あったようである。

 白いご飯を食べられるのは、1年のうちでも数える程で、「かて」の

入らない白いご飯は、大変なごちそうでもあった。

 「お正月様はいいもんだ、雪のようなまんまが食べられて・・・・」と

心から正月のくるのを楽しみにまったという。

 また、「おかず」は四季折々の食素材を味噌汁・漬け物・煮物・

おひたし・油いためなどを中心に質素で単調な食事だった。

 春の食素材は、山菜を中心にふきのじ味噌・わらび・わらびとろろ・

ぜんまい・竹の子・しどき・たらぼう・ふき等のようである。

夏には、きゅうりの酢のもの・きゅうりの汁・なすの油いため・なす漬け・

ささげのよごし・梅干し等を夏の健康増進のための工夫をした

料理が多い。

秋は、きのこ・やまゆり・くり・大根等の食素材を使ってさまざま

な「おかず」を創作た。

 冬には、納豆・けんちん・さえんつゆ・なめ味噌などに山兎・

山鳥などの動物性の蛋白質を合わせてた料理が多く、身体の

健康の維持につとめた。

 江戸時代には、関東圏からさまざまな文化・芸術・情報などが

磐城地方にも入りだし、食文化の革命ともいえる醤油などの

使用がはじまった。

 高価な醤油を使う料理は祝い事や祭事の折りなど、特殊な

料理に限られた。

 それでも醤油を使用する料理は増え、代表的なものが煮染

(煮菓子)めで、里芋を中心に人参・昆布・コンニャク等に季節の

野菜を加えて醤油で煮る料理である。

 ご飯ものは、代表的なものは五目飯である。人参・カンピョウ・

油揚げ・干しいたけ等を千切りにして醤油で味付けし、酢と

共に混ぜ合わせもの。

 汁物では、人参・コンニャク・里イモ・豆腐・魚などを、汁を多くして

醤油で味付けして煮たツユビラ・オヒラ汁と呼ばれるものがある。

 こうして醤油の出現は、これまでの食文化を大きく変化させ、

食素材にまで与えた影響は計り知れない。